インソムニア 2

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 高校、大学とテニス部に所属して、体力と腕力には比較的自信があった。だが衰えは進行していて、十五回目に差し掛かるころにはプルプルと二の腕が白旗に追い込まれる。  気合いで二十回をこなした後、ベッドに戻って腹筋五十回に挑戦する。ベッドのバネがギシギシとやかましかったが、腹筋は苦労なく達成することができた。下腹部が出てきたと悩んでいたけれど、脂肪の下に埋まっている六つの腹筋は、まだまだ現役らしい。  背筋二十回もやり抜き、これ以上の負荷は明日に響くと察した俺は、冷房を付けてベッドに滑り込む。最近使っていなかったからか、カビ臭い匂いが部屋に循環する。だが身体が一気に冷却されていくのは快感だった。  漁船に打ち上げられたマグロが、マイナス数十度の冷蔵庫に担ぎ込まれてカチカチになる。そんな夢を見たなら、是非とも彼女に話そうと夢想していた。  だがそれから、どれだけの時間が経っても眠気はやってこなかった。  徐々に不安を募らせる俺は、見なければいいのに、時計を見ては睡眠時間を逆算し、また焦ってしまうもんだから、また眠気が遠くなる。  午前の二時を回っても眠れない俺はついにベッドを抜けだし、途中までで止まっていた文庫本のページをめくることにした。ヒーリング効果があるとかいう、川のせせらぎや野鳥のさえずりを録音した動画も携帯で再生する。     
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