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屋根越しに見える空には切れ切れの雲がただよっていて、その雲間から星の光がのぞいていた。しばらくぼうっと眺めているあいだに雲が流れ、弓なりの銀白色の月が顔を出す。
その直下を流れ星が走った。窓の表面に溜まっていた水滴がすこしずつ大きくなり、ついに零れるかのように。
あっというまもなく流れた星に、両手を合わせて願う。
神様、どうか聞いてくれ。
俺は不治の病を治したいわけでも、遠くの地で別々に生きる異性に逢いたいわけでも、湯水のごとく大金をはたく大富豪になりたいわけでもない。
ただ、眠らせてほしい。
色々な願いを聞き届けるあんたからしたら、そんな願いと笑うかもしれないが、俺にとっては切実な願いなんだ。頼む、頼むよ。
眼を開けてみる。さっきまで見えていたはずの銀色の月は、逃げるように雲隠れしていた。俺はくしゃみをして部屋に戻った。
ベッドの上の時計は四時を差していた。
俺はまだまだ調べ物を続けた。不眠症の対策の一つとして、寝る時間にはこだわらず、好きな時間に寝ましょうというものがあった。泣きたい気持ちになった。こんなの詐欺じゃないか。
ほかにも、手に備わっている眠れるツボを押すといいとか、眠れる呼吸法を試すといいとあったので片っ端から試した。結果的には試してみただけだった。
なにか、なにか方法は。
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