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俺は自分で掛けた夜空の願いに叛逆する必要があった。近くのコンビニで立ち読みでもして時間を潰そう。国道沿いを歩き始めるころには、通勤する車の排気ガスで街は覆われていた。
待ち合わせの時間の一時間前に到着した俺は、映画館前のベンチにどっかりと腰かけていた。疲労はピークを超えていた。夜通しカラオケに興じ、徹夜で麻雀の卓を囲っていたのも、もはや過去の栄光だ。
左右の両膝にそれぞれの肘を乗せ、なんとか寝ないようにと顔を支えていると、花形の付属品が付いたサンダルが眼の前で止まった。俺は顔をあげた。
期待に胸を膨らませる彼女と眼が合った。その顔は一瞬にして雲行きが怪しくなる。
「先輩、どうしたんですか。そのひどい顔」
いつもは地味な髪留めで結んでいるポニーテールを解き、彼女は一層幼く可愛く見えた。腰元をリボンの形にした水色のワンピースを着ていて、大学生くらいにも映る。
「元々、こういう顔だよ」
「そんなの嘘です。なにかありましたね」
「ちょっと仕事があって」
「そう、ですか。お疲れ様です」
彼女は同じ課にいるのだ。これが嘘だということは勘づいているだろう。
俺は空元気に膝をパンと叩いて立ちあがる。だが身体は正直なもので、立ちあがった途端に貧血のようにくらっとした。体調は絶不調だ。
「それじゃあ、行くか」
「は、はい」
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