インソムニア

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 だがしばらくは仕事に追われ、仕事が一段落したときのご褒美としてとっておいたらしい。だが公開も明後日で終了らしく、ギリギリのタイミングだとのこと。 「土曜日の十時半からですが、先輩、大丈夫ですか」 「俺を誰だと思っているんだ。起きられるに決まっている」 「そうですよね。失礼しました」  土曜日に一緒に食事するから、今日はお開きにしましょう。そうして俺たちは一昨日別れ、長い長い今日の仕事も終えたのだ。  ついに明日がデート。謂わばデートイブの夜だ。  しかしあんなベタベタな恋愛映画を見たいなんて、やはり年の差なのかな。俺は明日彼女に披露する面白エピソードを厳選しつつ、そんなことを考えていた。  彼女と俺とでは三歳差で、俺は今年で二十五歳になる。彼女とは仕事の面倒を見る役目を命じられており、なにかと接点が多い。  会議資料をどうすれば見やすく作れるか。データ処理はどうすれば効率的か。厄介な上司へのホウレンソウはどうすればいいか。  先輩風を吹かせながら、戸惑う彼女にさりげなく教えたとき、濡れそぼった瞳はキラキラと輝く。まるでピンチに駆けつけてくれたヒーローを見上げるような視線。  俺はそんな瞳に恋をした。キザでもなんでもなく、マジの話だ。     
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