インソムニア 2

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 彼女はきっと電話をしてくるだろう。もしもマナーモードになっていれば、電話が掛かってきても気付かずに、惰眠を貪り続けることになる。  一応、確認はしておこう。  馬鹿馬鹿しいとは分かっていたが、携帯の電源ボタンを押す。マナーモードをちゃんと解除されていた。とんだ杞憂だった。  ディスプレイに表示された日付はすでに変わっていた。よし、今度こそ寝ようか。  俺はやっとのことで人心地になり、毛布の優しい重さに身を委ねる。閉じた眼に浮かぶ、しゅわしゅわと万華鏡のように刻一刻と変わりゆく模様を凝視し続ける。それは穏やかな砂絵であり、湖面にたゆたう波紋でもある。  これを見ていると次第に意識が遠のき、いつのまに雀が朝を知らせてくれるはずだ。俺はその模様を眺め続けた。  だが一向に、眠気が立ちのぼる気配がしない。遠足前の小学生のような高揚感。どうも体勢が気に入らなかった。そうだ、俺はどちらかといえば横向きで寝るタイプだ。仰向けがいけないんだ。寝返りを打ち、手を抜いたり頭の下に置いたりと調節して眼を閉じる。だが意識は鮮明で眠れる気配がない。  そういえば、携帯のブルーライトを見ると脳波が乱れ、十五分くらいは寝られなくなるとネットで見たことがある。  十五分。  頭のちいさな部屋のなかにホワイトボードが出現し、俺は水性ペンで計算式を並べていく。     
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