夜空に歌え

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「遼さん」 あたしが声をかけると、彼がゆっくりとこちらに目を向けた。 「また歌ってるの。」 彼は、いつも寂しそうな目をしている。 「うん、遼さんに笑って欲しいから。」 コンビニエンスストアの店員と客。 それだけの関係ではないあたしたち。 「聞かせて」 「うん」 きっと、遼さんはあたしの気持ちに気づいている。 それでも何も言わないのは、何かを恐れているから。 あたしも、遼さんも。 何かが変わるのを恐れている。 だからあたしは歌う。 このままずっと、こんな関係で良い。 好きだなんて、言えなくても良い。 「夜空に願うよ」 あたしの気持ちが、遼さんにずっと届きませんように。
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