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悲しいかな。
私は鏡の前で愕然とした。
落ちないのだ。
これはペンで書かれたものではない。
じゃあ何?
とにかく、外部から手を加えられたものではないようだ。
悲しむ暇はない、出勤時間が迫っている。
7時48分?んなこたあわかってるよ。
前髪で隠そう。
悲しいかな、悲しいかな。
先日美容院に行った時に前髪を切ってしまえばよかった。
斜め半分に分けた前髪は「馬」を隠してくれるが「鹿」を隠してはくれない。
当然、逆に分けると「鹿」を隠してくれるが「馬」がお目見えする。
「馬」を選ぶか「鹿」を選ぶか、フィフティ・フィフティ。
選べるか馬鹿野郎。
そう、紛れもなく、私だ。
前髪をセンター分けにしてみたら?
「馬」の半分と、「鹿」の半分がお目見えする。
だめだあ、これは。
何事も、中途半端は良くない。
奥の手だ。前髪を切ってやる。
手先は意外と器用なんだ。
ジョキリと髪の断末魔を聞いた後に、私は膝から崩れ落ちた。
前髪の1本1本の隙間から、ゾートロープのように「馬鹿」が見える。
夏休みの工作よりひどい出来だった。
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