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「そっか、そっか!私の手伝いかぁー!美琴ちゃん、意外に優しいんだね!」
「・・・意外は余計だよ」
「いやいや、君ぐらいの年の子はもっと素直でなくちゃ!それに、もう少し年上を敬ってくれるはず!」
「それはお前の願望だろ」
「んなことない!」
諒介に食いぎみで否定する。美琴はため息をつき、テーブルに出ていたコップなどを片付け始めた。
「い、いいよ!美琴ちゃん!お客さんなんだからさ!」
「・・・手伝うって言ったからちゃんとやる」
「あ、いや、でも・・・」
「それとも何?杏子は人の好意を無下にするの?」
どこで覚えてきたんだと問いたくなるような、日本語が美琴の口から次々に飛び出してくる。
「・・・分かった、任せる」
杏子が決断した言葉は、美琴の顔をパッと明るくさせた。最初はハラハラしたものの、美琴は杏子が思っている以上にこなしている。
そして、美琴がそろそろ帰らなければならなくなった時刻。
「やだぁ!帰らないもんっ!」
「えぇぇ?」
美琴が愚図り始めた。小豆が『きゅうん』『くぅん』と鳴きながら、美琴のそばをくるくる心配そうに歩き続ける。
「ほら、小豆だって帰りたがってるよ!早く帰んな!」
杏子は椅子から動こうとしなかった美琴を、無理やり立ち上がらせ、出口までつれていく。
「いやぁ!帰らないもん!」
「んなこと言ったってさぁ~・・・!」
杏子が美琴に、てを焼いているのを横目で見ながら諒介は、ふと外に視線を向けた。探偵社の窓からじっと乾佐茜が、杏子と美琴のやり取りを眺めている。
諒介がどうにかしようと動いた瞬間、探偵社のドアから満面な笑みの茜が入ってきた。
「・・・こんばんはー、すみません、美琴が迷惑かけたみたいで」
「わ、私は帰らないからね!」
茜が窓からだとわからなかった、怒りと殺気を剥き出して杏子を睨んだ。美琴はそんなこと露知らず、杏子に抱きつく。
「私は今日から、杏子の子になるもん!」
「はぁぁ!?」
冗談だとわかっていても、杏子は茜がいる方向を向けない。
「杏子さん」
「あいっ!?」
突然の茜からの名前呼びに、杏子は背筋に寒気が走った。
「・・・あまりふざけたことをしたなら、ぶっ殺しますよ?」
「し、し、してません!!断じて何もしていません!」
めでたしめでたしは、もう少し先
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