2,突然

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娘は探偵社に行く道をどんどん進んでいき、着いたとわかるとウキウキワクワクしながら、勢いよく扉を開けた。 「おかえりー、あん・・・こ?」 「た、ただいまー・・・」 挨拶してくれた諒介も、扉を開けた張本人である娘もどちらも固まっている。杏子は一応挨拶するが、多分、諒介の耳には届いていない。奥から出てきたランは、いち早く状況を察したのか、営業スマイルという名の作り笑いを浮かべた。 「・・・やぁ、杏子、お使いご苦労様。これは、どういうことだい?」 「あ、いや、それはむしろ私が聞きたいくらい・・・」 「「あぁ?」」 「わかった、分かりましたよ!ちゃんと説明するからぁぁ!!」 正気に戻った諒介と、メガネの奥を光らせているランからの攻撃は、もう逃れられない。杏子は観念して今の状況を説明する。相変わらずまだ娘はポカンと三人のやり取りを眺めていた。 「・・・てな訳です」 「ふーん・・・言いたいことは分かるがなぁ」 「でももう、時間が一杯一杯だよ。ほら、二週間くらい前からのあの件だってもうすぐ報告日だろう?」 「お、お願いしますっ!!」 小豆探しを渋っている諒介とランに、娘が精一杯小さな頭を下げる。諒介はまだ煮えきらず、杏子が出したお茶をすする。杏子はハラハラして、目線を諒介と娘を交互に見る。 「小豆は大事な家族なんですっ!私が小さいときからずっと・・・!」 「わかった、わかったから!とりあえず君、名前は?」 涙を手の甲でぬぐうと娘は、か細い声でだがもう泣かないように力強く言った。 「乾佐美琴・・・」 「じゃあ、美琴ちゃん。小豆を探してほしいんだよね?なんで、あのとき君のお父さんは俺達に小豆の捜索をやめてくれって言ったんだ?気が変わったのか?」 「違うの、ずっとそう思ってた。なのに、お父さんが勝手に変なこと話始めちゃってぇ・・・」 美琴は今度は我慢できずわんわん泣き出す。だが、三人は子供の扱いに慣れておらず、誰も美琴を慰められない。諒介と杏子がおろおろするなか、ランだけが臆せずに美琴の前に達はばかった。
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