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「じゃあ、何故君の父親は勝手に小豆の捜索を、止めさせたかの心当たりは?」
「知らない」
「知らない?では何故、知ろうとしなかった?大事な家族なんだろ?」
「それはっ」
ランの口調がどんどん、美琴を追い詰めるものに変わっていく。途端に諒介がランを掴みかかる。
「お前、いい加減にしろっっ!!」
「はぁ?なんで」
「なんでって、お前あの子の気持ちを考えて喋ってんのかっ!?」
恐ろしい剣幕で、怒鳴る諒介を目の前に、ランはクククククと笑いだした。
「あの子の気持ち、ねぇ。じゃあ、諒介、君は今乾佐美琴の心の中が分かるというんだね?では、説明してもらおうか。彼女は今、どんな気持ちなんだ?」
「どんな気持ちって」
諒介が答えられない事に、肩を震えさせて笑うラン。笑い終わった後、真顔で諒介の自分の胸ぐらをつかんでいる手を払う。
「ほらな、君も分かっていないじゃないか。よくそれで、怒る気になれたなぁ?」
「どういう意味だ」
諒介に睨まれるランだったが、全く気にせず美琴に近寄る。美琴はランの異様な雰囲気を察したのか、怖がって距離をとる。
「君はあのとき、父親の言動に疑問を持ったはずだ。だが、その場で指摘しなかった。それは何故か?お前は父親に嫌われるのが怖かったんだろう?だから、嫌われるのを恐れて何も言い出せず、自分から何もせずにいた。違うか?」
「違うっ!!」
ランの言葉を遮るように、美琴が自分の両手で耳を塞いだ。だが、それでもランは止めようとしなかった。
「だが、小さい頃からの小豆も助けたいというお前の欲望があった。だから、杏子を待ち伏せしたんだろう?今日、杏子が通った道はお前の通学路では無かったからな」
「は?いや、待って。なんで、ラン君が私が通った道を知ってんの?」
「あぁ、ちょっと近代の小型端末を利用して?」
「はぁ!?てことは、私の携帯の位置情報調べたなっ!?」
笑いながら誤魔化そうとするランを、杏子が強い口調で捲し立てる。諒介は、このランと杏子のやり取りで怒りがおさまったのか、顔をしかめてため息をついた。
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