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ある日の昼頃。廃工場に若い男女二人の影があった。男が、出口のそばにしゃがみこみ中の様子をうかがっている。すると、男の携帯に着信があった。
『やぁ、諒介。どうだ?僕の情報は正しかっただろう?』
「・・・てめぇ、それだけの事を言うために電話してきたのか?」
男こと、松原諒介の声に苛立ちが混じっている。その諒介の話し相手である硯ランは、クスクスと笑う。その笑い声に諒介は腹が立ち、乱暴にブツッと通話を終了させた。
「ラン君から?何の用?」
「・・・ただの冷やかしだ」
そばにいた女、中条杏子に半ばキレ気味で答える諒介。諒介はその高ぶった感情のまま、廃工場に突入する。
「おい、出てこい!!ここにいるのは分かってんだぞ!?」
その声に反応したのか、工場の奥でガタガタと物音が聞こえた。諒介と杏子は無言でだが、情報は静かにゆっくりと、物音がした方へ近づく。だが、気づかれたようで裏の出口から逃げられた。
「くそっ!!」
「どうする?事務所に戻る?」
「戻る!」
杏子が提案すると、諒介は苛立ちながら工場の敷地においといたバイクに杏子を後ろにのせ、工場をあとにした。
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