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とりあえず杏子は、乾佐美琴の家の前に行ってみた。今は丁度、下校時間らしくちらほらランドセルを背負った小学生が見える。美琴の姿を探そうと、杏子は辺りをキョロキョロと見回した。
「・・・何してんの?」
「美琴ちゃん!」
「だーかーら!何してんのって聞いてるでしょ!?」
美琴は腰に手をあてて、杏子を睨み付けた。
「小豆がね」
「見つかった!?」
まだ小豆しか言っていないのに、美琴は目をキラキラと輝かせて杏子の次の言葉を待っている。杏子はスマホの操作をし、ランのスマホの位置情報を表示させる。
「ここに一緒に来て欲しいんだけど、い」
「ダメっ!」
突然家の中から鬼の形相の、茜が出てきた。杏子は顔をひきつらせ、美琴は忌々しそうに舌打ちをする。
「ダメです!美琴は連れていかせません!」
「いや、でも」
「でもじゃありませんっ!ていうか、なんなんですか?小豆はもういいって言ったじゃない!それともなんですか、そんなにしてまでお金がほしいんですか!?とにかく、小豆はうちの犬じゃありませんから、連れてきたとしてもお金は払いません!!」
まくしたてる茜の言葉が、おどおどしていた杏子の 逆鱗に触れた。杏子は茜を睨んでやった。
「何かしら?」
「・・・あんたさぁ、命って知ってる?」
「はぁ?何よ、急に」
「急じゃねぇよ。あんたらは小豆の事をなんだと思ってる訳?物じゃねぇんだぞ?」
「そ、そんな事言われなくても分かってるわよ!」
「分かってる奴が、もう探さなくていいなんて言うわけねぇだろ!!」
「たかが犬で、ペットじゃないっ・・・!」
「たかが犬でペットでも生きてて、てめぇらの家族だ!!」
「杏子、行こっ!!」
タイミングを見計らって、美琴が杏子のてを引いた。茜はその美琴の小さな手を、掴むことができなかった。
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