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その場にいる人達が凍りつくなか、茜だけはつぐみに向かってニコニコと笑いかけていた。
「どうする?いる?」
「いや、え?腹、立たないんですか?私、一応浮気相手ですけど・・・」
「別に?さっきも言ったけど私、美琴がいればそれでいいのよ」
あまりにも開き直って、サラサラと答えるもんだから、誰一人として茜に反論できない。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「・・・何?しつこいなぁ」
直之が口を挟むと、茜がつぐみに向けていたニコニコとした笑顔が、凍てつくような睨みに変わった。直之はヒッと短い悲鳴をあげ、逃げ腰になったのだが、ぐっとこらえた。
「君は僕を愛してくれたんじゃなかったのか!?浮気をしたから、さっさと離婚なんてあんまりじゃないか!」
「いや、当然だろ」
諒介も凍てつくように睨み付ける。諒介に同調するように、杏子とランもうんうんと頷いた。
「それにそこにいる女なんて、ただの遊びだったんだ!」
「サイッテー」
「・・・なんで私、こんなの好きになったんだろう」
つぐみも直之の発言でどんどん、冷静になってきている。だが、当の本人はそんなこと露知らず、茜とヨリを戻すことで手一杯のようだ。
「それで?何?浮気はもうしないから、離婚しないでくれって?フハッ、ハハハハハハ!!」
茜が腹を抱えて笑いだした。その茜の様子をポカンとした間抜けな顔つきで、直之は見守る。数十秒すると、茜の笑いは収まりつぐみに向けていたニコニコ笑顔になる。
「・・・あなたって本当にバカだったのねぇ~」
「え、それはどういうこと・・・」
「私は最初から美琴が欲しかったのよ」
「はぁぁああ!?」
またも乾佐家に杏子の叫びが響いた。
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