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それからというもの、杏子はため息ばかりついて仕事で使い物にならない日々が続いた。
依頼者にあやうくお茶をぶちまけそうになったり、頼んでおいた仕事を忘れたりと探偵社のお荷物になっていた。
「・・・ごめんなさい」
「あのなぁ、お前、乾佐家のこと忘れられないんだろ」
「っ!?」
「杏子は顔に出やすいからねぇ。」
「嘘でしょ、まじで!?」
杏子は慌てて両の手のひらで顔を隠し、見られないようにした。諒介がため息をつくのと同時に、探偵社のドアが開いた。
「こんにちはっ!」
顔を隠していた杏子がその声を聞いて、顔をあげる。そこには、屈託のない笑顔で小豆のリードを引いている美琴がいた。
「み、ことちゃあぁん!?」
「うるさいな、杏子は。あの時はそんな反応しなかった癖に」
美琴はあの時と同様に、ドライだ。だが、それは彼女が変わっていない事の証明なので、美琴は顔がほころぶ。
「美琴ちゃんだぁ!小豆もいる!」
「・・・杏子が私のこと心配して仕事してないって聞いてさ」
「え、なんで知ってんの?」
「それで私・・・」
「チャンスだと思って!」
「は?」
美琴が言った言葉が理解できず、ポカンとして杏子は美琴を見つめた。
「だって、仕事してないって事は探偵社のお荷物ってことじゃん。それだったら、私の方が役に立つと思ってアプローチしに来たの!」
「え、あ?最近の子って、積極的だねぇ~・・・」
とっさのことで頭が回らない杏子はそんな、的はずれなことにか口にできなかった。
「で、どう!?私を雇ってくれない!?私、杏子、より役に立つ自信あるよ!!」
諒介とランは美琴の話より、腹を抱えて笑いだした。
「ヤベェ、杏子、お前まじでヤバイな!!」
「はぁ?」
「ほんとに、クククク・・・っ。ヤバイっ」
「はぁぁ?」
杏子の声に段々、怒りを帯びてくる。
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