2,突然

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三人は探偵社に戻るなり、疲れがどっと押し寄せ部屋の真ん中にあるソファーで息をつく。 「あー!!もう!あのガキどもふざけんじゃねぇよ!!」 「杏子、落ち着け。悪いのは小学生じゃない。亀を踏みそうになった諒介のせいだ」 今ごろになって怒りが沸いて口が悪くなっている杏子に、ランが追い討ちをかけにやけながら諒介を指差す。諒介は仏頂面でランを睨んだ。 「つか、どーすんだよ!?小豆のいる場所なんてわかんねぇんだろ!?」 「今は、ね。直に」 ランの言葉の途中で探偵社の扉が開く。入ってきたのは、依頼主の乾佐という気弱そうな男と、小さな女の子だった。小さな女の子は気弱そうな男の後ろに隠れながら、諒介達らを睨み付ける。 「え、えー・・・っと?ご、ご報告日でしたっけ・・・?」 「い、い、いえ!!そういう訳ではな、ないんですよ!」 「パパ、ちゃんとして?」 突然の来訪にあたふたする諒介。それが依頼主にも伝染し二人であたふたする。女の子、いや、乾佐の娘の言葉で平静を取り戻した、乾佐が諒介を落ち着かせる。 ランと杏子はとりあえず、乾佐親子をソファーに誘導し、三人は乾佐の向かいのソファーに腰かける。 「で、何のご用でしょう?あいにく小豆はまだ捜索中ですが」 「・・・小豆の捜査をやめていただきたいんです!!」 「「「え?」」」 「す、すみません!!娘がもういいと言うもんですから・・・」 三人は困惑気味に乾佐の娘に目を向ける。娘は先程よりもきつい目で三人を睨んでくる。乾佐は三人に深く頭を下げると娘の手をつれて、逃げるように探偵社を立ち去った。杏子はまだ頭の整理が追い付いていないのか、呆然としている。 「え、え?何、どういうこと?」 「だからー、小豆はもう探さないってこと」 「えぇぇ?」 杏子は理解したものの、諒介の言葉に戸惑いをみせる。諒介はため息をついて、ソファーから自分のデスクに移動する。ランも自分のデスクで面白くなさそうに、仏頂面でパソコンに向かう。 「・・・でも、あいつかわいそうだよね」 「まぁ・・・、実質捨てられちゃった訳だしねぇ」 ランは自分のデスクで杏子に相づちをうつ。杏子は長く深いため息をして、テーブルの上を片付けた。
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