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外ではセミが勢いよく鳴いている。
僕は軒先の窓を開け放ち、首を振る扇風機の風に定期的に吹かれながら、算数の宿題に追われていた。
積み上がった宿題の山は一向に減る気配はなく、僕はすぐに飽きてしまった。
長方形の公園の、入口から出口まで、最短距離の線を引くというくだらない問題。
僕は鉛筆を回しながら、夏休みの楽しい想い出にふけっていた。
ページを開きっぱなしにし、かれこれ10分は経っただろうか。
5つ上の兄は、隣で本を読みながら僕のその様子を見ていた。
兄は不意に立ち上がると、問題集をどけ、プリンター用のA4の紙を持ってきて、僕の前へと置いた。
兄は僕の鉛筆をサッと取りあげ、紙の両辺の直線上にそれぞれ点を打ち、順に鉛筆の先で指し示す。
「この辺の点から…この辺の点まで。最短で行くには?」
兄は僕に問う。
問題が分からずに困っているように見えたのだろう。教えようとしてくれているらしい。
ちょっと休んでいただけだ!バカにするな!
僕は鉛筆を奪い返すと、コンパスのそばに置いてあった定規を手に取った。
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