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第1章 飛び込みノルマは1日10件。
ごくありふれた公務員家庭に生まれた僕は、そこそこ勉強が出来、なかなかの大学を卒業して、上々な会社に就職した。
それが、リサベル商社――1ヶ月前に入社した僕の職場である。
「新人の皆さん、1ヶ月間の研修期間をよく頑張りました!お疲れ様でした!!」
やたらとギラギラした眼差しと口調で僕たちを労うのは、新人教育責任者である人事課長だ。
「研修は終わりましたが、今日から皆さんは一人前の社会人としての生活が始まります!」
鼻息も荒く、集まった50人の新人を見渡す。
何で語尾に全部「!」つけるんだよ。
アツすぎて新人がひいてるの気付かないの?
「今日から3年間、皆さんには営業をして頂きます!最初の3ヶ月の飛び込みノルマは1日10件!売上目標は、月30万円!!皆さん!頑張って研修の成果を発揮して下さい!!!」
アツすぎる人事課長の演説を、海辺でキャッキャウフフする妄想でなんとかやり過ごし、僕たちはようやく解放された。
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