第1章 飛び込みノルマは1日10件。

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「乙っす~。」 「おー…えっと…おつかれ。」 「オマエ、オレの名前忘れてない?つーか、最初から覚えてない可能性もアリ?」 50人の同期の中でも、かなり目立つ男が声をかけてきた。 人見知りで地味な僕にも時々こうして声をかけてくれる、貴重な同期だ。 貴重な同期だが、名乗られたことがないので、名前を知らない。 「君の名は。」 正直に問うと、本気で傷ついた顔をした。 「タキ=クミールだよ。つか、マジで知らんかったか。いや、そんな気はしてたが。」 本気でショックを受けた様子。 「君こそ、僕の名前を知っているのかい?」 申し訳なさを感じながら問うと、 「いや、知らん。聞いてないし。教えてちょ。」 と、シレッと言う。 見た目も中身も軽々しい男なのである。 軽々しいが、案外頭の回転が早く、気遣いが出来たりするので、僕はこの男が嫌いじゃない。 「僕は、サイ=ミライ。改めてよろしく。」 「こちらこそ!」 ニカっと笑うタキは、同期イチのイケメンスマイルを振りまいてきた。 周りから、ほうっ…とため息が聞こえたのは気のせいじゃないだろう。
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