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一瞬何が起きたのか理解できなかった。 私は咄嗟に身構えると砂煙を凝視していた……
「ササラさん気をつけて下さい…… 何かいます! 」
砂煙は揺らめくと、 視界に捉え切れないスピードで私へと迫る何かを必死に避けていた。 右足に激しい痛みが走り、 思わずバランスを崩しそうになってしまうが、 なんとか踏み止まっていた。
「うっ…… 一体何が…… 」
何かで切り裂かれたであろう、 ふとももからはかなりの出血があり、 足を伝い地面へと血が流れていく。
大丈夫…… まだ動ける。
砂煙から目を逸らさない様に、 右足の傷を確認した私は、 徐々に薄くなって露わになっていく視界の中で、 驚きの声を上げてしまう。 赤と黒のそれは、 今まで見たエニグマ達の中でも異質な存在だった……
ただ立っているだけなのに…… 血よりも濃い紅い瞳を見た瞬間、 恐怖と共に私の足は自分の意思では動かす事が出来なくなってしまう。
「新手のエニグマ…… 」
「ササラさん、 今までのエニグマとなにか違います! これは…… 私達が勝てる相手ではないです…… ササラさんだけでもすぐに逃げてくださ…… ッ!? 」
突然地面が爆発したと同時に、 激しい衝撃音がササラの耳に響いていた。 地面へと叩きつけられるように、 マリアが体を打ちつけながら倒れる姿に、 ササラは身動きできずにただ呆然と立ち尽くすのだった……
殺される。
マリアさんも…… 私も……
目前に迫る死への恐怖は、 ササラの体を強く縛り付けていく。
「ササ……ラさ……ん…… にげ…… 」
「皆んな一緒に帰るんです!…… マリアさんも、 ラキさんも一緒に…… ハク様のところに連れて帰りますっ! 」
恐怖を振り払うように大きな声で叫んでいた。 さっきまで動かなかった足は、 大地を蹴ると赤と黒のエニグマへと駆け出していた。
「セラフィム!! 」
光が集結するとササラの右手に、 輝きを増したセラフィムが現れていた。 ササラはしっかりと握りしめた細剣をエニグマへと振り抜くのだった。
セラフィムから放たれた斬撃は、 動きを止めたエニグマをしっかりと捉えていた。 赤と黒のエニグマは両手で顔を塞ぐと、 苦しむように声を上げる。
「あぁぁァぁっ! 」
追撃をしようと振り抜きかけたセラフィムを、 ササラは寸前で止めると力無くセラフィムを地面に落としてしまう……
「ラキさ……ん…… ラキさんなの!? 」
ゆっくりとササラへと顔を上げたエニグマは、 悪魔の様な顔の半分が崩壊し、 ラキの顔がそこにはあったのだった
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