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~ *** ~
大分、柔らかくなった春の日差しが、私たち親子に優しく降り注ぐ。
だが、桜の蕾もまだ膨らみかけの週末の公園は、
人の姿もまばらで、その中を小さな優喜が嬉々と走る。
そして、時折ちいさく咲く花や草に目を止め、また走りだす。
その楽しそうな姿を、私たちは、のんびりとベンチで見詰めていた。
「千奈美がね、優喜は、必殺の眼差しをするって」
いきなり話題を振ったからか、彼がキョトンと私を見返す。
だがその眼差しに、昨夜、少し先ではしゃぐ息子に妬きもちをやいた
彼の顔が重なって、私は細く笑いだす。
「それね、冠くんとそっくり。
だから千奈美も、私が冠くんを可愛いって思う気持ちが分かったって」
「じゃあ、今は千奈美さんも、僕が可愛いって思うのかな」
どこか伺うような目をして、私を見返す。
しかし、さすがに濃密な昨夜の後の今日なだけに、私は余裕だった。
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