第10章 三年後(つづき)

23/26
前へ
/38ページ
次へ
~ *** ~ 大分、柔らかくなった春の日差しが、私たち親子に優しく降り注ぐ。 だが、桜の蕾もまだ膨らみかけの週末の公園は、 人の姿もまばらで、その中を小さな優喜が嬉々と走る。 そして、時折ちいさく咲く花や草に目を止め、また走りだす。 その楽しそうな姿を、私たちは、のんびりとベンチで見詰めていた。 「千奈美がね、優喜は、必殺の眼差しをするって」 いきなり話題を振ったからか、彼がキョトンと私を見返す。 だがその眼差しに、昨夜、少し先ではしゃぐ息子に妬きもちをやいた 彼の顔が重なって、私は細く笑いだす。 「それね、冠くんとそっくり。 だから千奈美も、私が冠くんを可愛いって思う気持ちが分かったって」 「じゃあ、今は千奈美さんも、僕が可愛いって思うのかな」 どこか伺うような目をして、私を見返す。 しかし、さすがに濃密な昨夜の後の今日なだけに、私は余裕だった。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加