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「今回の猫さんからの依頼は死亡事件に関する調査だ。猫さんの飼い主である女性が一週間前に亡くなった。その件は警察にもまともに捜査されることなく終わりを迎えた。猫さんはその件の再捜査を希望している。そして、犯人を見つけてほしい、と」
「見つけてどうすんのー?」
探偵娘の明るい質問に。
「呪う。そして食い殺す。なぜあの人が死ななければならない。あの人を殺した者を殺す。殺さねばならない。そうすることでこの身に破滅が訪れようとも、それでも、殺さなければならないっ!」
黒猫は呪詛を吐き出しながら、そう答えた。
「あの人は死の間際、物憂げだった。何かを心配しているようだった。何かに怯えるように泣いていた」
「怯える。心配。泣く」
「私は、その時、猫又となった。仇をとらねばならない。無念を晴らさなければならない。仇だ。無念だ。その一心で、私は『こう』なったのだ」
「なり立て。一心」
「なるほど。お話は聞かせていただきました。では、なぜ殺人であると思ったんです?」
「………うん?」
「あーちゃん。その聞き方、ダメ。ちなみに、ネコさん。イエネコだった?」
助手にダメ出しをした後に、よくわからない質問をする探偵娘。
「うん? そうだ。家の中で飼われていた。生まれた時からずっと。ずっと一匹で、あの人はずっと一人だった」
そんな探偵娘に、訝しげに黒猫は答えた。
「なるほどー。で、あーちゃん。質問どうぞ」
「………あー、」
いまいち要領を得ない探偵娘の促しに、助手は溜息を吐いて、いつものように探偵娘の言うことに従うことにした。
「怪しい人、見ましたか?」
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