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「どうも! 申し訳ありません!!」
助手は客が待っているという自分たちの事務所の扉を開けながら謝罪を述べる。客を待たせて事務所を空けるという言語道断の行為に対する当然の謝意だった。
「って、あれ?」
しかし、助手の頭上にはてなマークが浮かぶ。というのも、その謝意を受け取る相手の姿がどこにも見えなかったからだ。
「おいこらタマ! 誰もいないぞ!?」
助手はそう言いながら、担がれたのかと顔をしかめるが、背後からの「えぇ!? うそ!?」という探偵の声にそれはないと思い直した。
ならばどこかに隠れているのか、とあたりを見渡したところで、また探偵が声を上げた。
「なーんだ、びっくりした。ちゃんといるじゃーん」
どこに?
そう訊ねようとした助手は探偵に目をやって思わずめまいを覚えた。
探偵の腕の中には、黒猫が一匹、窮屈そうに収まっていたからだ。
「おいバカちん」
「んむ?」
「客は?」
「ほれ」
そう言って探偵が差し出してくるのがまさにその黒猫だとわかると、助手はその場にしゃがみ込んだ。
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