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 待ってくれ。  「我々の中で解決できない物事が起きた時、氏等を訪ねるだろう。その際は力を貸してほしい。さて。早速だが、依頼の件について話がしたい」  「ちょ、ちょっと待ってくれ」  先を急ぐかのように話を続けようとする黒猫を助手が止める。  探偵娘と黒猫の視線を浴びながら、助手は一瞬、口籠る。それから意を決したかのように発言した。  「支払い能力はあるのか!?」  (………………え、そこ?)  探偵娘は助手をまじまじと見る。  彼女の幼馴染は、たまに、本当にたまに、ずれている時がある。  「あるぞ。ちゃんと通貨は円だ。氏等に頼むために人に化けてアルバイトをしたから、まっとうな金だぞ」  「そっか。ならいいや」  (………………いいんだ)  そのずれが、普通とは違う存在にとって、どれだけ救いになるのか、それを本人は知らないだろう。探偵娘も、そのずれによって救われている一人なのだということも、彼は知らない。事故で人を死なせてしまった彼女も、殺し屋稼業にて生きていた少女も、そして事故による障害で周囲の成長から取り残されてしまった彼女も。  みんながみんな、ありのままを受け入れてくれる彼の周りから離れられなかったのだ。  まあ、その結果、家に帰れば夫婦水入らずのはずの空間には殺し屋稼業の少女が居座り、仕事場にはここぞとばかりにべったりとくっついてくる探偵娘がいる。彼の妻は気が気ではないだろう。  (ちーちゃん。かわいそうに)  原因の一人が、彼の妻を思いながらほろりと涙を流す。  奥さん奥さん。旦那がまた、新しい女引っ掛けてますよ、と。
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