1人が本棚に入れています
本棚に追加
外から聞こえる鳥の声で、わしは目を覚ました。
時計を確認すると、六時前だった。
わしはもう一度眠ろうと目を閉じる。
だが、一度気になると鳥の声がうるさくて眠れない。
三十分もすると、わしは諦めて布団から出た。
昨日の残りの味噌汁を温める。
目玉焼きを焼いて、ご飯をよそう。
わしは仏飯を持って、和室へと向かった。
「……ほれ、母さん」
線香に火をつけ、手を合わせた。
――彼の妻は、一週間前に亡くなった。
心筋梗塞で、彼はお別れを言う暇もなかった。
手を合わせ目を開けると、妻の遺影が目に入る。
そこに映る彼女は、死んだなどとは信じられないくらい、朗らかに笑っている。
「…………母さん」
彼はぽつりと呟いた。
――あいつは、幸せだったのだろうか?
あいつは人に好かれる人だった。
友だちや近所の人が、大勢葬式に来てくれた。
明るくて、楽しいおばあちゃんだったと、皆言った。
でもわしは、あいつとは真逆だ。
あいつのように人付き合いはよくないし、喋るのが得意でもない。
甲斐性もろくにない、給料も良くない男のところに嫁いで、幸せだったのだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!