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「そういう時はね、星に願えば良い」
「星に?」
少女は窺うように聞き返す。天で光っているだけの星に何を願えと言うのだろう。どれだけ祈ったところで、死んだ人間は生き返らない。こんな国で御伽噺を信じられるほど、少女は無邪気ではいられなかった。
しかし青年はうん、と頷いて続ける。
「辛いことも苦しいことも、全て星に報復を願えば良い。星々はいつも我等を見守っており、きっとそれを叶えてくれる。……この国の、古い言い伝えだ」
「報復……」
「うん」
青年が指差した先の夜空は、まだ炎に焼かれて赤く爛れていた。星も炙られ燃え尽きてしまったに違いない。それでももっと上、首を限界まで反らせて見上げた天頂には青く輝く星々があった。ちらちらと瞬いているそれは、まるで泣いているように少女には感じられた。
--ああ、ああ。自然と両手を胸の前で組み、目を閉じて少女は祈っていた。
夜が明けるまで二人は其処に座っていて、空がうっすらと緑に染まり始めた頃立ち上がり、それがごく自然なことであるように、隣に並んで歩き始めた。
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