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合い鍵を作るだけ作って、どんなタイミングで渡そうかとウダウダ考えている間に時間が経ってしまったけれど。
「これがあったら、司が寒い思いすることも、雨に濡れたり、雪積もらせたりすることもなくなるかなって」
「ぁ……」
「っていうのと。──いつでも、好きなときに来て。オレがいてもいなくても」
「そうま……」
「オレがもしいなかったら、連絡して。すっ飛んで帰るから」
ね、と。
まだ呆然としたままの司に笑いかけて、鍵を載せたまま固まっていた手のひらをそっと閉じてやる。
「持ってて。オレが安心だから」
「────うん」
驚いたままのぎこちない顔で、それでもはにかんで笑った司が、大事そうにキーホルダーに鍵をつけてくれるのを見つめて立ち上がる。
「よし。じゃ、行こっか」
「ん」
「今日は晩ご飯何食べたい?」
「…………なんでもいい」
「ちょっとー、それが一番困るって、司も知ってるでしょ」
おどけた口調で怒って見せたオレに。
立ち上がってオレと同じ目線になった司が、その目に照れを滲ませながら
「なんか……おなかってか……胸? が……いっぱいで、なんか……もう、入んないな、って」
そんな風に恥ずかしそうに呟くから。
愛しさに胸を撃たれて嬉しさによろめきながら、どうしようもない可愛さに打ちのめされる。
まさかこんなにも可愛いだなんて、反則だ。
そんな風に内心で呟いたら、ぐぃ、と司の腕を引いて足早に歩き出す。
「そうま? どしたの?」
「ごめん、ちょっと……可愛すぎて我慢できない」
「へ?」
「帰るよ」
「ちょっ……え?」
転ぶようについてくる司を、近くまで引き寄せたら。
キョトンとした顔を覗き込んで、熱を込めて囁いた。
「あんまり可愛いこと言って、煽んないで」
「あおっ!? ってなんかっ」
「襲いたくなる」
「──っ」
ぼんっと顔を真っ赤にした司を、有無を言わせず引っ張って家路を急いだ。
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