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時計の針が8時を指した頃。
何も知らずに帰宅した彼はテーブルに並べられた料理を見ると、いつになく嬉しそうに笑った。
「おっ、すごいご馳走だなぁ。」
「一緒に暮らし始めて今日でちょうど1年でしょ。ちょっと奮発しちゃった。」
いつもは買わない血のように赤い贅沢なワインをグラスに注ぐ。
私が最後の晩餐に乾杯しようとグラスを手に取ると、彼は床に置いた鞄の中をゴソゴソと漁った。
「乾杯の前に、ちょっといい?」
「どうしたの?」
もしかしたら妻と復縁することになったから別れようと言われるのかと思いながら、ワイングラスを静かにテーブルの上に置いた。
彼は鞄の中から取り出した何かをテーブルの下に隠し持って笑っている。
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