芽生えた殺意

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妻との離婚話が進むこともないまま付き合って1年近くが経った頃、私が少しでも安心できるように一緒に暮らそうと言い出したのは彼だった。 一緒に暮らそうと彼が言ったと言うことは、もうじき妻との離婚が成立して堂々と彼との関係を親や友人に明かせるのだと思ったのだけれど。 彼に私という恋人がいると知った妻は“絶対に離婚はしない”と言って、離婚話には応じなかったのだそうだ。 妻が怒るのも無理はない。 別居中とは言え彼と妻はまだ夫婦なのだから。 今にして思えば、好きだからこそもっと早く別れていれば良かった。 そうすれば彼が私だけのものにはならないことを虚しく思うことも、妻への後ろめたさに押し潰されそうになることも、彼を想って苦しむこともなかったんだ。
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