クリエイト

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それから数日後。 私は公園のベンチで、スケッチをしていた。 目の前を歩いて行く人々、その向こうの芝生で戯れる人々、そして抜けるような青空を背景に、青々とした色で目を楽しませる木々を。反吐の出そうな程、平和な光景だ。 時折、通り掛かった人や、芝生で遊んでいる子供等が、私の手元を覗き込んでは、感嘆の声を上げる。しかし、私は気にもせずに、次々と新しいページを開いた。私の目は、新しいインスピレーションを得る対象を求めて、視界から様々な情報をかき集めていた。 その時、視界の端に現れた女性に、心を掻き乱される。手を休め、その女性に関心を向けると、やはりそれは彼女だった。彼女は笑みを含んだ瞳を私にちらりと向けると、私の前を通り過ぎていく。私はその瞳を受け止めると、何事もなかったかのようにデッサンを再開した。 あの後、メディアは餌に食い付いた魚のように賑やかだった。しかしその中に、私の作品を正確に評価したものはなかった。どれも『キメラ殺人再び』や『極めて残虐で異常な手口』といった、お粗末な言葉を載せている。 しかし私は、それらの言葉に怒りを感じる事はなかった。私の作品は、彼等の理解の範疇を超えているのだ。それでもこの仕事を続けるのは、芸術家の性でしかないだろう。 そんな事を考えながら手元のスケッチに視線を落とすと、自分でも意図していない画が描かれていた。それを見て、私は動いた。新しい作品だ。 私はクロッキー帳を閉じると、立ち上がった。そして彼女とは逆の方向へ足を向ける。 新しい作品の構想を練りながら。
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