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最初の作品を公開した時、世間はこう騒いだ。
『不気味』で、『不愉快』で、『悪趣味』だと。
それは、どれだけ作品を創り上げようと、変わる事はなかった。それどころか、キメラ等という不快な名称で呼ばれるようになったのだ。
だが得てして、時代が過ぎ去らないと、芸術というものは評価されない。そう思い、怒りを鎮めてきた。感情は不要だ。判断を誤らせるから。
それでも彼女に対しては、切り捨てた筈の感情が沸いてくる。その理由を見つけ出そうと、彼女の瞳を覗き込んだ。しかし彼女は、そんな私の思考に気付く筈もなく、再び口を開いた。
「左の……脇腹を見て」
彼女の言葉に促されるまま視線を落とすと、彼女の服の裾を捲る。そこから現れたのは、彼女の喉元と同じ白く滑らかな柔肌ではなく、醜く爛れた皮膚だった。私は驚いて、彼女の顔に視線を戻した。これでは彼女を、どんなに美しい造形に仕上げようと、完璧な作品には仕上がらない。しかし彼女は、落ち着いた、不思議な色合いの瞳で見つめ返してくるだけだ。
「……何が?」
その瞳に、私は作品を仕上げられないかもという苛立ちよりも、興味の方が先に立った。
「子供の頃に、そう、12だった。火事で」
それでもう言う事はないと思ったのか、それとも痺れによる疲れからか、彼女は口を噤んだ。しかし私は、
「どうして?」
その先を促した。彼女は、少し考えるかのように瞳を伏せる。それから、再び私に視線を絡めた。
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