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完璧だった。本当の答えは、既に彼女の表情にある。それを見て、彼女は私と同じなのかも知れないと思った。だけど彼女は、まだそれに気付いていないのだろう。だから私は、更に質問を重ねた。
「それで、これからどうすれば良いかな?」
「……そうね」
その質問は、彼女にとっては予想外だったかも知れない。それとも想定内だったのか。一瞬、逡巡する様子を見せる。それから私と、その向こうにある翼を交互に見て、ゆっくりと口を開いた。
「こんなのはどう? わたしのバッグに鍵があるわ。部屋の鍵だけど、同僚とシェアしてるの。彼女、今頃ぐっすり眠ってるわ。わたしより、ずっと綺麗な子」
そして視線を翼に据えると、言葉を続けた。
「きっと彼女、その翼がよく似合うわ」
そう言い切って、すっきりしたように表情を浮かべた。この場を乗り切る為に、適当な事を言っている訳ではないのは、その顔を見れば分かる。そんな彼女を見て、私は自分が思い違いをしている事に気付いた。彼女は私と同じだ。そして彼女自身、その事を自覚しているのだ。ただ、その表現方法が分からなかっただけなのだろう。
「そうだな……」
私は考えた。いや、考える振りをしただけだ。彼女にはきっと分かっている筈だ。その表情が崩れる事はなく、じっと私を見つめていた。
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