復讐劇

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一時間ほど歩き続けると、出口らしき縦穴と梯子(はしご)がある。 計画通りの時間に、一安心して、外の景色をイメージした。 場所は中央の中心。 j.corporationの地下に繋がっているはず。 つまりここを出れば、人工知能の中枢は目と鼻の先なのだ。 高鳴る鼓動に僕は驚いた。中央にいた頃はこんなに、動揺したことがなかったのだ。 「これが恐怖か……」 そして僕は恐怖を噛み締める。これが生きているということなのだ。 人生とは楽しいことばかりではない。苦しみや悲しみがあってこその、人生なのだ。 僕は今、生きている。そして活かされている。 初めて僕に存在理由ができたのだから。 そして僕は梯子を登り、『坑道出入口』と書かれた扉を開いた。 そこは、どうやらサーバールームの配線を這わしてある空洞のようだった。 確かに地下にサーバールームを置くことは地上を生きる人間にとっては最善であるだろうが、外敵にはこれほどに弱いとは。 そしてここは僕の目的地でもある。当然、そうなる出入口を選んだが、ここまで上手くいくと、僕は自分を天才と呼ばざるを得ないだろう。
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