復讐劇

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 ここからはサーバーに接続してウィルスを注入する。  そしてそれを餌に本当のウィルスを注入し、人工知能を戦闘不能に追い込んでから、新システムを置き換える。  一見単純だが、タイミングが重要なのだ。  僕の右手はこの小さなチップを接続してからが勝負だ。  微かに震える右手は、この行為のリスクを物語っていた。  バレた時、捕まった時、罰を与えられる時。  僕は死ぬのだろうか。    考えてもしょうがないのはわかっていた。  僕の脳細胞もそれを避けるように復讐に専念しようとするが、心臓は跳ね上がるように脈動し、その震動は血管を伝い、右手へ流れて来ているのだ。  これが恐怖なのだ。  だが、止めるわけにはいかない。この世は間違っているのだから。  彼らの為にも、僕のためにも。  僕はサーバーに強く強くチップを差し込んだ。  震える右手を左手で押さえながら。  やがて震えは恐怖から覚悟に変わっていった。 「さぁ、始めよう。これが僕の十五年間の結晶だ」
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