天才ゆえの運命

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天才ゆえの運命

 チップからのウィルスはサーバー内に広がろうとしている。  データは凄まじい速度でサーバー内を食い尽くそうと増殖を重ねるが、単なる餌である。  僕が作った新型ウィルスは、トロイの木馬をもとにしており、ウィルスが侵入する際の警報機能に即座に直結し、警報と同時に発現するように組み立てている。  つまり人工知能の利己的素因を利用するものだ。  餌のウィルスはファイヤーウォールを破り、即座にサーバー内のファイルへと移動する。  その中に混ざった新型ウィルスが警報機能へと感染し、トロイの木馬は完成した。  その実、およそ五秒ほどで、警報機能が作動するまでにはもう少しあるだろう。  そして、僕はもう一枚のチップを取り出した。  こちらには新システムが入っている。これは平等に人間を評価し、最適な役割を与え、全人口による社会構造を作り上げる為のシステムなのだ。  彼らが不平等に苦しむことがなくなることを願って。  そして高らかな警報音が鳴り響く。自然とチップを握りしめて、新型ウィルスの発現を待つ。  そしてそれは無駄のない洗練とされた速度で実現することとなる。  人工知能のプロトコル、データ、判断パターンを分析し、その全てを破壊していく。  正確にはファイル等を削除していくのだ。  進捗率は徐々に進み、敷地内が騒がしくなる。  そしてファイル削除が八十パーセントを越えたところで、サーバーに新システムを移した。  新システムはウィルスに犯された領域を、内部に含ませたホワイトハッカープロトコルでウィルスを消去しながら、空いていく隙間にデータを入れていく。  想像していた経過時間とは相違ない。計画通りである。
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