『天才』と呼ばれた少年

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つまりは、人工知能による統制は、平等な評価ではなく、利己的な支配なのである。 恐らく人工知能にとって害と成るであろう存在は、僕のように堕とされるのだ。 なんてふざけた統制だ。人間による統制と、なにが違うのか。 そこに感情はなくとも、自らを生かそうとする意思がある。 そして自らの立場を利用して、人間による統治を不可能にし、危険因子を除害し、絶対支配を行っているということになる。 「ふざけるなよ……」 僕に評価が下されるとともに、僕の研究データは全て処理された。 そうすることで人工知能は今まで通りの統治を可能にしたのだ。 こんなふざけたことがあるか。 人工知能による利己的支配の下で、満面の笑みで優雅に暮らす人々と、廃棄され、満足のいく生活を遅れないでいる人々。 全ては人工知能の掌の上で転がされていたのだ。 そうして寿命をもたない人工知能の永久的支配は終わることなく、人々を腐らせていくのだ。 僕は隔壁の外側へと連れ出される最中に、処理されたはずの研究データを記憶の中から呼び起こすことに集中した。 人工知能の長所、短所。処理能力と、その分配比率。 システム構築における脆弱性。 あらゆるデータを呼び起こし、繋ぎあわせていく。 細胞分裂が過剰なのか目頭が焼けるように熱いが、今はデータが全てなのだ。 僕の人生を利己的に奪った人工知能への、復讐の為に。
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