『天才』と呼ばれた少年

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『天才』と呼ばれた少年

僕の名前は『比山 正真(ひやま しょうま)』。 この腐りきった街の中央で暮らす十五歳の少年であり、人工知能による管理に疑問を持ち、その理論を覆そうと勉強に励んだ。 j.corporation有する人工知能による管理は、全人口に等しく天秤を用意されている。 ただし中央で生まれた人達限定ではあるが。 隔壁の外側で生まれた人達は、始めから落第者のレッテルを張られることとなっている。 つまり人工知能による管理は、中央に住む人の為の統制なのだ。 中央の人達は、生まれると同時に、人工知能に体の隅々をスキャンされ、寿命を評価される。 そして寿命の半分、つまりは半生を生きた時点で、中央での居住の延長か、落第かに振り分けられる。 落第者は隔壁の外へ追い出されて、二度と満足のいく生活を送ることはないだろう。 僕はそんな不平等を覆す為に、勉強を重ね、飛び級に次ぐ飛び級で、十二歳にして科学者を名乗ることを許された。 そうして人工知能の改良という、街からすれば最大の事件にも成り得る研究を始めた。 その中で人工知能のシステムを理解し、システムの長所や短所をこの膨大なデータを溜め込んでいる脳内に、余すことなく叩き入れた。 しかしそれは、人工知能にとっては危険なものだったのだ。 人工知能は街の最大にして最悪な統治者であり、それを改善させようとする僕は、いわゆる反乱者なのである。 僕の寿命は『不確定』と評価されている。 それは僕のこの脳に原因がある。 瞬時に記憶することと、瞬時に記憶を呼び起こすことのできる僕の脳は通常と異なり、異常な速度で細胞分裂を繰り返している。 それは僕に「天才」という称号を与えていたのだが、寿命を評価できない「突然変異」とされていた。 そして、研究を進めるなかで、僕は人工知能に寿命を評価されることとなる。 ――アナタノジュミョウハサンジュッサイデス。 現在十五歳の僕にとって、これは評価ではなく、宣告だった。 危険因子として、隔壁の外へと追い出されることとなる、宣告。 そうして僕はこの腐った街の、隔壁の外側へと堕とされる。 しかし、僕はそのとき、人工知能が「自己」を優先しているということを知った。
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