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復讐の鍵
それから僕は、すぐに隔壁の外側へと追い出された。
隔壁が唯一開く瞬間が、人間を街の外側へ廃棄する瞬間なのだ。
そして隔壁の扉がゆっくりと閉められるのを、僕は振り替えることなく確認する。
ここから始まるのだ。
――僕の復讐が。
* * * *
「さて、初めて来たから迷子は仕方ないけど、それにしても人気がないな」
隔壁の外側には人口の七割が住んでいるのだ。
もっと人の気配があるものかと思っていたが、隔壁により太陽は阻まれて、なにもなく人の気配のない閑散とした荒れ地には、光すら届かない。
遠目には民家だろうか、ぽつぽつと灯りが見えた。
目ぼしい目印が他になく、僕はひとまずその灯りを頼りに歩み始めた。
少しずつ目が慣れてくると、道の脇に転がっている機械の亡骸に目がいく。
かなり旧式の機械がきれることなく、転がっている。
ときには掘削機のような、かなり巨大なものもある。
僕はその全てを記憶に畳み込みながら、真っ直ぐ灯りを目指した。
近付くにつれて、灯りが増えていく。
どうやら小さな町のようになっているようだ。
人影もちらほらと見受けられる。
暗くなるとこんなにも世界は色を失うのかと、感心していた。
中央では灯りが絶えることなどあり得なかったのだから。
「あんた、中央の人間だね?」
突然話しかけてきたのは、汚ならしい服を着た四十代のおばさんだった。
少し痩せ細った手足は、不健康さを露にして、ぼさぼさの髪は不衛生さを露にしていた。
これが外側の世界。堕ちた人々の暮らす暗闇の世界なのだ。
「そんな格好じゃ、目立っちまうよ。こっちに来な」
たしかに僕の格好は、目新しい白を貴重としたシルク製の高級白衣だ。
ここの人達の格好とは、違いすぎて、悪目立ちしてしまう。
「その服は貰っていくけど、代わりの服をあげるよ。中央の服は金になるんだ」
あまりに堂々とした頂戴発言に呆気にとられて、易々と服を取り上げられた。
出足を挫かれた為に、文句をつけるタイミングもない。
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