0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あーうん、そうなんだけどね……」
彼女は、嬉しさと恥ずかしさと少し寂しそうな、何とも言えない表情をしてから、困った笑みを浮かべた。
「でもさ、やっぱり私はあんたにはちゃんとした恋人を作って欲しいなっていうか」
「無理だよ、俺には。かっこいい部分ないし、自慢できることないし。いいとこ何もないし」
本当に、何もない。
自分が嫌になるくらいに。
こういうことを考えると、途端に死にたくなる。
「そんなことないよ」
彼女はなんの迷いもなくそう言った。
「全然そんなことない。だってあんた、すごく優しいから。ダメなとこもあるけど、私はあんたのいいとこも知ってる。私はそういう存在だから」
そう、そういう存在。
俺の一番の理解者であって、理想の恋人像。
もちろんそれは理想であって現実ではない。
でも、だからこそ気楽に接することができる。居心地がいいんんだ。
でもたまに、少しだけ寂しくなる時もあったりする。
「えっと、ありがとう。でも、それはお前だからで、他の人は知らないよ」
「なら知ってもらえばいい」
「どうやって?」
「そのくらい自分で考えてよ」
ピンッ、とおでこにデコピンを入れられる。
「いでっ……。なんだよ、もう」
彼女がくすくすと笑う。
「あれ、もしかして怒った?」
「……別に」
その後、しばらく他愛もない話をして教室に帰った。
教室に戻ってからは、だらだらと授業を聞き流していた。
それからあることに気付くまでにそれほど時間はかからなかった。
普段は空なはずの机の中に、半分に折られた小さい紙が入っている。しかも俺がちゃんと気づくように少し飛び出すように入れてある。
「……なんだこれ?」
どうやらメモ帳の紙っぽい。
どうせいたずらか何かだろうと、たたまれた紙を開く。
最初のコメントを投稿しよう!