モウソウカノジョ。

6/15
前へ
/15ページ
次へ
 そこにはこう書いてある。 『放課後、屋上に来てください。待ってます』  その一文と、右下には差出人の名前が……え、まじで?  そこに書かれていたのは、今朝話したあの子の名前。  俺はつい反射的にあの子のいる席に目をやる。  すると、あの子もこちらを見ていたようで一瞬だけ目が合った。が、あの子は顔を赤くすると、すぐに黒板の方へと視線を戻してしまった。  あの子の反応から察するに、これはそういうことなんじゃないだろうか。  でもなんでだ。全く心当たりがない。  どっきりか罰ゲーム、と思ったがあの子はそんなことするようには見えない。  なんかもやもやする。  ――そんなこんなで放課後。  あの子の姿はもう教室にはなかった。 「どうするかなぁ、これ」 「なにそれ?」 「急に出てこないでくれ。びっくりする」 「ごめんごめん」  気づけばそこには彼女がいた。いたずらな笑みを浮かべている。 「で、それがどうかしたの?」  彼女は俺が持っているメモ用紙を見つめる。 「えっと、それがさ……」  軽く説明を終えてから、いったん落ち着く。 「なるほど。あの子がねぇ……」 「ああ、そうなんだよ。どうしようか……」 「よし、今すぐ行くわよ」 「え、ちょっ、いや、でもっ」 「いいから、あまり女の子を待たせちゃだめよ。わかったさっさと行く! ほら早く!」 「ちょっ、待ってくれよ」  先に屋上へと急ぐ彼女。なぜだか少し、嬉しそうだった。 「早いって、ちょっと待って……」  息を荒くして、屋上の扉に続く階段の前でいったん立ち止まった。  絶賛運動不足中だった。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加