モウソウカノジョ。

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「あれ、来てくれてたんだ。てっきり帰っちゃったのかと思ったよ」  俺に気づくや否や、いつもどうりの笑顔を見せる。 「ああ、ごめん。遅くなって」 「ううん、平気」  それから二人は再び屋上へと足を運ばせた。  いつの間にか、そこに彼女の姿はなかった。  先に口を開いたのはあの子だった。 「ごめんね、急に呼び出しちゃって」 「いや、大丈夫だよ。で、どうしたの? こんなところに呼び出して」 「うん、あのね……」  歯切れ悪く答えると、さらにこう続けた。 「えっと、君って今彼女とかって、いるのかな……?」  そんな質問に胸をどきりとさせる。 「えぇっと、それは……」  どうしよう。言葉が出ない。  今、いつもみたいに隣に彼女はいない。  いつもなんだかんだで頼りになる彼女はいない。  俺はどうしたらいい。わからない。 「あ、やっぱり彼女いるんだ……」  しばらく戸惑っていた俺を見てそんなことを言う。  どこか残念そうだ。 「ああ、いや、違うよ」  俺はとっさにそう答えた。答えてしまった。  でも俺は嘘はついていない。だけど……。 「あ、そうなんだ。困ってるみたいだったからてっきり……。ふぅ、なんかちょっと安心しちゃった」 「ああ、うん……。いきなりだったからちょっとね……あはは」  なぜだか胸が締め付けられる。  それから、目の前のクラスメイトが小さく深呼吸をして俺を見つめる。 「それでね、えっと、もう気づいちゃったかもしれないけど……、私、君のことが好きなの」
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