0人が本棚に入れています
本棚に追加
告白された。もしかしたらなんて思ってはいたけど、そう決めつけるのは自意識過剰すぎる。最初はそう思ってた。きっと何かの間違いだと言い聞かせ、考えないようにしていた。
「ぁ……」
声が出ない。どう返事をしたらいいんだ。
「だからその……もしよかったら、私と付き合ってほしいな、なんて……どうかな?」
茶に染まりウェーブのかかるセミロングの髪。背は低めで全体的に少し幼い。
改めてこうしてじっくり見て思う。可愛いな、と。
そのとき、俺の中でのこの子の存在が大きくなっていくのを感じた。
上目遣いでこちらを見つめる瞳には、多少の不安を孕んでいるように思える。
そんなこの子の様子を見てなお、俺はこの状況がいまだに信じられない。
「えっと、その……理由とか、聞いてもいい?」
正直、この子に告白されるような要素は俺にはないと思う。
特別仲がいいわけでもない。他の女子と比べたらそれなりに仲がいいって程度だ。
かといって俺がイケメンかと言われたらそんなことはない。自分では普通くらいだと思っている。
じゃあ何が――
「えっとね、特別な理由はないんだ。ただ、いつも君を見てると、すごく優しい人なんだなって思った。実際に話してちゃんと私も感じた。いつも周りに気を配って、もめごとになりそうになるとさり気なくそれを鎮めたりして」
そんなのはたいしてなんでもない、普通のことだ。
ただ争い事や面倒が嫌だからそうしてるだけなんだ。
「二人で話してるときなんかは、なんか色々気遣ってくれてるなって思ったの。こっちに話を合わせてくれたり、楽しそうに相槌をいれてくれて。あとはたまに日直の仕事手伝ってくれたりとか。まぁ、これはたまになんだけどね」
そういっていたずらっぽく笑う。
「そういう何でもない、ちょっとした優しさがいいなって、だんだん思ってきて。もしかしたら私にだけこんなに優しいのかな、なんて勘違いしそうになったりして。そんなこと考えてたら君のことどんどん気になって、気づいたら好きになってたの」
恥ずかしそうな表情で顔を赤くして、でも俺からは目を離さずに見つめている。
正直この子の気持ちはすごくうれしい。可愛いし、優しいし。
こんな子に告白されて断る男はいないだろう。
でも俺は……。
最初のコメントを投稿しよう!