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「ハルセ」
ハルセが一人で掃除している時に声をかける。
「ハルセがラピス抱っこする機会、なかなかないでしょ?」
「重くなったわよ」
ハルセに無理やりラピスを押しつける。
「え、だって」
「あたし、すごい泣かれて」
「みんなの方が上手にあやすのに」
ラピスは大人しく、ハルセに抱っこされてる。まだ、人見知りは始まってないみたい。
「うん、重くなった」
「寂しいなあ」
「姫宮が歩くとこ、見たかったなあ」
ハルセには、ハルセの個人的事情がある。使用人とはいえ、つがいが住む屋敷の使用人は人気がある。たまたま、宮妃と同い年で、家柄も悪くなかったハルセが選ばれた。しかし、そのことをハルセの姉妹が妬んで、家でシーアノ宮家のことを話すことは禁じられている。そんな姉妹がいるなかで、自分も皇都に行きたい、なんて言えなかった。
「いつでも遊びに来てね」
宮妃からそんな言葉をかけられた、とは、口には出せない。そっと、自分の胸にしまう。
ミヤに頼めば、都に住んでいる男性との縁談もあるだろう。だけど、それを言える状況ではない。
「あたしは一生ノギかなあ」
「ずっと一人かも」
ラピスをあたしに返して、ハルセは部屋を出ていく。
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