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友達は黙って私のことを見守ってくれる。
この友達のことを……
いつか、彼に話さなければならない。
「あなたもきっと彼と仲良くなれるよ。彼はとても優しい人だから」
◇
――私の大切な友達――
私達は2人で1人。この体は彼女と共有している。
私は彼女に生かされ、彼女は私に生かされている。
幼少から重い心臓病を患っていた私は、5年前、心臓移植しか生きる道はないと宣告された。
迫るタイムリミット。私に適合するドナーが現れ、私は奇跡的に死を免れた。ドナーは奇しくも同じ年齢の少女だった。
術後、母は私の胸に手を当て『麗(れい)を宜しくお願いします』と言った。
心臓は拒絶反応を起こすこともなく、心筋生検も異常なし。トクトクと元気な鼓動を鳴らした。
自分の体の中で、他人の心臓が動いている。
しかも、自分と同じ16歳の少女。
私はその現実と上手く向き合えなかった。
そんな私を見かね、母はこう語り掛けた。
『生きているだけで幸せ。あなたは彼女から、幸せの半分を分けてもらったのよ。彼女はあなたの友達。1日1日を彼女と大切に生きなさい』
『幸せの半分……』
彼女は私の友達……。
私は彼女から、幸せの半分を分けてもらっている。
――母の言葉に、自分の中で何かが変わった。
その日から、彼女は私の大切な友達になった。
嬉しい時も、楽しい時も……
ドキドキするような彼とのデートも……
いつも彼女と一緒。
彼女から与えてもらった幸せの半分。
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