幸せの半分……分けてあげるね。

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 ――その年のクリスマスイブ。  私は彼からプロポーズされた。  ピンクのガーベラと霞草の小さな花束。  花束の中には白い指輪ケース。  ケースにはダイヤのエンゲージリング。  素敵なサプライズに、私の鼓動がトクンと跳ねた。 「本当に私でいいの?私は……16歳の時に心臓の手術を受けたの。だから……奥さんらしいことは何も出来ないかも知れない」 「わかってる。心臓の負担になることはしなくていい。僕の傍にいてくれるだけでいいんだ」  彼は私の全てを受け入れ、私の友達も受け入れてくれた。 ◇  ――2017年6月――  純白のウェディングドレスに身を包み、神父様の前で永遠の愛を誓う。  2人の薬指にはプラチナのマリッジリングが輝く。  義母は1枚の写真を胸に抱いていた。写真の少女はとても愛らしい笑みを浮かべている。彼に妹がいたことは聞かされていなかったため、私は驚きを隠せない。  義母の涙に、鼓動がトクンと跳ねた。  まるで……泣いているみたいに。  挙式後、義母は私を抱き締めた。「おめでとう。麗さん。家族になれて嬉しいわ……」そのぬくもりはどこか懐かしく、母に抱かれたように心地よい。  ――披露宴を終え、控室で彼は自分の生い立ちを話してくれた。 「義母は僕と血の繋がりはない。僕は幸村家の養子なんだ。あの写真の女の子は麻耶(まや)、義母の愛娘なんだよ。血の繋がった妹じゃない。麻耶はピンクのガーベラが大好きだった。義母は君と家族になれて心から喜んでいる。3人でいい家族になろうな」 「……はい」  彼の家庭環境は複雑で、義母と養子縁組をした経緯も、麻耶さんの死についても語らなかったが、私もこれ以上詮索しないと決めた。  彼や義母と話していると、不思議な安らぎを感じる。  鼓動は幸せに満ちた穏やかな音を奏でる。 「……幸せの半分。あなたにも分けてあげるね」
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