7/7
67人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
ひどく長い一日だった。 有り余る富が、私にも与えられたのだと思い知る。この富をこれからどうするのかは、きっと私次第なのだろう。一文無しで路頭に迷えば人生が壊れることは容易に想像がつく。けれど、有り余る富も容易く人を闇へと陥れることもあるだろう。父が振り込み続けてくれていたお金を母がほとんど使わなかったのは、甘えて落ちぶれる自分の姿が浮かんだからにちがいない。尊敬する母のように、私も強く生きていきたいと思った。 奇しくも父を愛した二人のお陰で、父の印象はがらりと変わっていた。無償の愛、というものがこんなにも苦しいものだということも、私は初めて知ったのだった。 こんなにも想える相手が、私にも現れるのだろうか。そう思ったときに、そこに今の彼の姿はなかった。今はただ、深い愛情の渦に私も飲まれていたかった。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!