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そうして、6月3日から毎月届く奇妙な贈り物の話を母にした。はじめは不審がっていた母の声が、だんだんと戸惑いの色を含んでいく。 「その送り主の方の名前は?女性だって言ったわよね?」 「あ、うん。大河内楓って人。すごく整った字で、文章は落ち着いた感じで。…お母さん知ってる人なの?」 名前を口にした瞬間、母が息を飲んでいるような気がした。 「…6月3日に届き始めたって言ったわね?」 「うん」 「そう…。届いた物、あんた使ってるの?」 その声色はどこか悲しんででもいるような、わずかな湿り気を帯びていた。 「使えないよ、こんな高価なもの」 「それでも、あんたももう役職も就いて、立派に働いてるでしょ。仕事ばっかりして、彼の話も聞かないし。お母さんには分からないけど、社交の場だってあるんでしょ?小物の一つでも、使ってあげなさい」 それは、相手を分かったうえでの言葉のようだった。それも、ひどく信頼の情が寄せられているような。 「ねぇ、お母さんは誰からなのか分かったんでしょ?誰なの?」 「…そうね。近いうちにそっちに行くわ。あんたが都合の良い日に合わせるから、連絡してくれる?」 「わかった」 電話で話すのではいけないのだろうか。そう思っても、口にはしなかった。大切な話があるのだと、暗に母が言っているのが分かったからだった。 すこし前から、彼とはあまりうまくいっていなかった。 見知らぬ人から届く高価な品々の話が細やかなプライドを傷付けてでもいるように、彼はその話を嫌がった。彼の財力ではどうしたって私にプレゼントできないそれら。もちろん、私にだって不相応だと分かる物たちを。ただ、たったの数行で伝えられる便箋の文字が、どうにも無下にはできなかったのだ。それなのに、まるで私が勿体なくて手放せないとでも思っているかのように彼は感じているようだった。 「大したブランドもあげられないような男、お前も嫌だろ」 そんな言葉を投げられた。
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