夏……京都三条河原町

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 京都の待ち合わせのメッカ、三条大橋東詰の土下座像前でアイと待ち合わせをした。  京都御所の方を向いて土下座をしている高山彦九郎という武士の銅像の前に着くと、アイはすでに先に着いていて、携帯電話をいじっていた。    そんな姿ですら、とても優雅で美しい。  今日のアイは水色のストライプ柄の半袖シャツに、七分丈のデニムを合わせていた。  胸元には、金色の小さめなネックレスが光る。  シンプルな服装が、僕より少し大人びたアイにとても良く似合う。 「あっ、マサルくん!」  僕に気がつくと、アイは笑顔で手を振ってこちらに駆け寄ってきた。  小柄なアイは、まるで小動物のように愛くるしい。  その仕草のひとつひとつが、とても素敵だった。  天気は快晴。大学に入って初めてのテストが終わった解放感からか、青空がどこまでも澄み切って感じられた。  アイと二人並んで、三条大橋をゆっくりと渡る。  夏の日差しを受けてキラキラとかがやく鴨川の流れ。  少し離れて大文字山が緑の木々を茂らせているのが見える。  河原沿いには何組かのカップルが等間隔で並んでいて、思い思いに愛を語らっていた。  京都の名物の一つだ。  自分もいつかは、あの中に入りたい。  そんな思いを抱きながら隣のアイをチラリと見る。  アイと一緒に入ったのは三条河原町のジャンカラ。  今でもあるのだろうか。  彼女とカラオケの薄暗い個室で二人きり……  それだけで、田舎から出てきた純朴な十八歳だった僕にとってはドキドキものである。  カラオケのモニターが美しいアイの顔をほのかに照らす。  アイは、当時若い女性を中心に支持を受けていた、小柄でカジュアルな服装で大阪出身の歌姫が好きで(a◯koのことね)、その歌をよく歌っていた。  透き通った歌声で、真剣にモニターの字幕を追う、長いまつげの奥の潤んだ瞳。  アイの歌は上手だった。  なんか聴いているだけで、鳥肌が立った。  一緒の空間を共有していることが本当に幸せだった。  楽しい時間が過ぎるのは、本当にあっという間だ。
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