夏……京都三条河原町

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 だが、運命の女神のちょっかいか、はたまた酸いも甘いも嗅ぎ分けた小悪魔のイタズラか……  さらに驚くべきことが起こった。  二回目のフラッシュが光る直前、彼女はなんと僕に腕を絡めてきた!    もうプリクラのカメラなんて全く視界に入ってこない。  隣のアイをチラリと見ると、彼女はさっきと変わらない表情でプリクラのモニター画面を見つめていた。  二人、そのまましばし、無言で、時が過ぎる。    彼女はプリクラを器用にハサミで切り分けると、半分僕に渡してくれた。  彼女はそのまま、僕の手を握り、手をつないで僕らは、彼女が乗る阪急電車の河原町駅まで一緒に歩いた。  僕の頭の中にはもう?マークがいっぱいで、彼女の話なんてうわの空だった。    彼女に握られた僕の手は、きっと汗でべっとりとなっていたことだろう。  でも、腕を絡めたり、手をつないだりって、そういうのは告白してからするもんじゃないの?  一応、僕も女の子とお付き合いした経験はあるけど、向こうが告白してきて、手を繋いだりその先は段階的に順番を踏んでからだ。  でも、これは、完全に脈ありってことでいいんだよな。  阪急電車の改札口に消えていく、アイの小柄な後ろ姿を見送りながら、僕の胸はさらに高鳴っていた。
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