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夢の中で
暗闇だけが、居場所だった。
そんな世界が嫌いだから私は呪いをかけたんだ。
優しさなんて、なくなってしまえばいいのに。
***
気がつくと、鬱蒼とした森の中を進んでいた。
「ここは、どこだ」
呟いた青年は足元に目を落とす。少しぬかるんでいて靴は泥まみれだった。上を見上げると背の高い木々が生い茂り光は差し込んで来ない。おまけに、霧が出ていて肌寒い。
ここは、どこなのだろう。青年はこんな場所に覚えがなかった。それどころかここに来るまでの記憶もない。確か、今日は疲れたから家に帰って窓辺で一服して、する事も無いからとベッドに入ったのだ。そこまではなんとなく覚えている。
つまり…。
「……夢か」
それ以外に思い当たらない。まあ、夢ならどうなってもいいかと歩き始める。すると、何処からか歌声が聞こえてきた。澄んだ消えてしまいそうな儚い歌声。美しく、それでいて何故か懐かしい様な感じがした。
誰が歌っているのかと好奇心にかられ、青年は歌声の方に足を向けた。
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