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小学校は近所の公立校に通っていた。
だけど、中学進学を期に受験をして電車通学となる祖父の教え通う中高大学一貫校への入学を希望した。
家族一同集まった場でその事を告げた兄に、皆驚愕し口を開けて言葉を失う事となった。
夕食後の団欒な一時に、伯父までもが共に囲む卓上で、飲みかけのお茶がボタボタと畳を濡らし固まる家族を私は破裂するかと思われるくらい爆つき暴れる心臓を抱えて、震えていた。
「な、何を言いだすのだ」
「何の冗談なの?」
「は、ははは……わ、笑える冗談だな」
「い、いやね、みんなを笑わせようとしたって、そんな冗談……」
「どうした? お前はそんな事を言うような子じゃないはずだろ?」
一様に無理矢理言葉を選んで吐き出そうとする。
慌てて布巾を取りだしテーブルや畳に流れた温いお茶を拭い、呼吸を整え始めた。
当然だ。
私が希望する一貫校は女子校。
祖父の出向いている学校の教え子は皆、女の子ばかりなのだから。
皆、兄を凝視して困惑していた。
考え直させる方法を模索している様が窺える。
でも兄は自分の決意を覆すつもりはないと、険しい表情を崩さず家族を見据えて背筋を伸ばした。
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